公正証書遺言はいつ書くべきか ― リハビリ現場で見た「判断能力」というタイムリミット

理学療法士として長年、たくさんの方のリハビリに関わってきました。その中で何度も見てきたことがあります。

昨日まで自分の足で歩き、家族の相談にも自分の言葉で答えていた方が、脳梗塞や認知症の進行をきっかけに、ある時期から自分で判断することが難しくなる。これは特別なケースではなく、誰にでも起こりうる変化です。

行政書士として遺言のご相談を受けるようになってから、このリハビリ現場での経験と重なる場面が何度もありました。

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公正証書遺言は「判断能力があるうち」しか作成できない

遺言のご相談で一番多いのが、「まだ早いと思うので」という反応です。

しかし、判断能力が失われるかどうかは年齢では決まりません。持病の悪化や急な発症、進行性の認知症など、状態が変わるタイミングは前もって分かりません。そして判断能力に疑いが生じた後では、遺言を作成できたとしても、後にその有効性が争われるリスクが大きくなります。ケースによっては医師の立会いなど、通常より手間のかかる手続きが必要になることもあります。

「元気なうちに」という条件には、思っている以上に短い期限がある、というのが実際のところです。

遺言がない・無効になった場合に家族に起きること

現場で見てきた例をお話しします。判断能力が不確かになってから遺言の話が持ち上がり、ご家族の間で「本人の意思なのか」「誰かの誘導ではないか」という疑いが解消できず、話し合いが長期化したケースがありました。

誰かに悪意があったわけではありません。ただ、本人の意思を確認する手段がすでに残っていなかった。それだけで、家族の負担は大きく変わります。

遺言は「死の準備」ではなく家族の判断材料

遺言と聞くと、「自分の死を意識すること」だと身構える方が多くいます。しかし実務的に見れば、遺言は残される家族が判断に迷わないための備えです。

本人が元気なうちに意思を書面で残しておくことで、後になって「本当の気持ちはどうだったのか」を家族が推測し合う状況を避けられます。

公正証書遺言のメリットと手続きの流れ

公正証書遺言は、公証人が本人の意思を直接確認したうえで作成するため、後から本人の意思が争われにくいという特徴があります。手続きは、証人の手配や必要書類の準備など一定のステップを踏みますが、行政書士等のサポートを受ければ、負担を抑えて進めることができます。

判断能力があるうちに検討すべき理由

判断能力があるうちにしかできないことが、遺言にはあります。先延ばしにするほど、選べる時間は短くなっていきます。

元気な今のうちに、一度検討されることをお勧めします。

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