静岡県東部で放課後等デイサービスは埋まっているか ― 市町別の事業所密度と計画の消化状況

静岡県東部で放課後等デイサービスや児童発達支援の開設を検討するとき、最初に確認すべきなのは物件でも資金でもありません。その市町・圏域が、すでに埋まっているかどうかです。児童福祉法は、都道府県の障害児福祉計画で定めた必要量に達している場合、知事が指定をしないことができると定めているためです。

本記事では、静岡県が公開している事業所一覧・障害児福祉計画・推計人口を突き合わせて、県東部の市町ごとにどれだけ事業所が入っているか、計画がどこまで消化されているかを集計します。指定申請の手続きそのものについては、静岡県で放課後等デイサービス・児童発達支援の指定を受けるで扱います。

本記事は2026年9月6日時点の情報に基づいています。

目次

先に結論

  • 県東部にあたる駿東田方圏域は、令和6〜8年度の3年分の整備計画箇所数を、2年で超えています。
  • 人口あたりの密度は清水町と長泉町が突出し、沼津市が最も薄い。同じ圏域内で倍以上の開きがあります。
  • ただし密度も箇所数の超過も、そのまま「指定されない」という意味ではありません。法律上の判断基準は箇所数ではなく利用者数・利用量の見込量で、その実績値を県は公表していません。
  • 需要は伸び続けていますが、伸びの主因は子どもの数ではなく利用率の上昇と考えられます。利用率が今後どこまで上がるかを示すデータはありません。

数字は判断材料にはなりますが、答えではありません。最終的には事前協議で確認するしかない、というのがこの記事の結論です。

静岡県内の放課後等デイサービスは754件。全サービス種類のなかで最多

児童発達支援と放課後等デイサービスは、どちらも児童福祉法の障害児通所支援です。児童発達支援は就学前、放課後等デイサービスは就学中の子を授業終了後や休業日に通わせるもので、1つの事業所で両方の指定を受ける多機能型が一般的です。

静岡県が公開している「障害福祉サービス等を行う事業所一覧表(令和8年4月1日現在)」を集計すると、次のようになります。休止中を除いた指定サービス数です(1事業所で複数サービスを提供する場合は別々に数えられるため、実事業所数とは一致しません)。

サービス県全体静岡市・浜松市県所管(政令市以外)
放課後等デイサービス754363391
児童発達支援381199182

放課後等デイサービスは、この一覧に載る全サービス種類のなかで最も件数が多いサービスです(次点は就労継続支援B型の607件、次いで居宅介護445件、生活介護387件)。

県所管391件の法人種別は、営利法人283件(72.4%)、NPO法人38件、社会福祉法人39件。株式会社・合同会社による参入が中心です。県所管分の新規指定を年別に数えると、児童発達支援と放課後等デイサービスの合計で2022年60件、2023年43件、2024年46件、2025年69件(2026年は4月1日時点までで26件)。参入は止まっていません。

利用は増え続けているが、子どもの数は減っている

参入が続く理由は需要側にあります。静岡県の第7期障害福祉計画には、サービス群ごとの利用者数の推移(各年度3月の実績)が載っています。

年度訪問系日中活動系居住系障害児通所支援
平成30年度4,05619,1115,40710,907
令和2年度4,31320,8095,91412,747
令和4年度4,52722,7046,85314,634
増加率11.6%18.8%26.7%34.2%

計画本文は「障害児通所支援の利用者は、平成30年度から令和4年度までに3,727人(34.2%)の増加となっています」と記載しています。4つのサービス群のなかで最も伸びが大きいという位置づけです。県はこの先も、放課後等デイサービスの利用者数が令和8年度に12,174人(令和5年度見込値10,316人)、児童発達支援が6,418人(同4,885人)まで増えると見込んでいます。

ただし、この伸びを「対象となる子どもが増えているから」と読むと判断を誤ります。子どもの数そのものは減っています。令和7年度の静岡県学校基本調査では次のとおりです。

項目令和6年度令和7年度増減
小学校 児童数―165,377人−5,443人
中学校 生徒数―93,080人−1,386人
特別支援学校 在学者数5,021人4,970人−51人
小学校 特別支援学級数1,2161,305+89
中学校 特別支援学級数579633+54

児童生徒数は1年で6,800人以上減り、特別支援学校の在学者も減っています。一方で特別支援学級は小中合わせて143学級増え、小学校では全学級の18.0%(前年度16.6%)、中学校では17.6%(同16.0%)を占めるまでになりました。

全国でも構造は同じです。特別支援学級の在籍児童生徒数は平成24年度の164,428人から令和6年度の394,785人へ2.40倍。障害児通所支援は平成24年度から令和5年度で、児童発達支援の利用者数が3.6倍、放課後等デイサービスが6.4倍・費用額は11.1倍になりました。その一方で障害児入所施設の利用者数は減っています(福祉型1,870人→1,280人、医療型2,122人→1,751人)。

これらを並べると、増えているのは支援を必要とする子の総数というより診断や判定を受けて制度につながる子の割合だと読むのが自然です。重度を対象とする特別支援学校や入所施設は横ばいから減少に転じ、特別支援学級・通級・通所支援が伸びている。対象の重心が移動し、入所から在宅へ移っているという形になります。

ただし、これは公表統計を突き合わせた読み方であって、有病率そのものが変化したかどうかは、これらの統計からは分かりません。

事業計画にとって重要なのはここです。伸びの主因は出生数ではなく利用率の上昇と考えられます。利用率がどこまで上がるかを示すデータは見当たらないため、需要が右肩上がりで続く前提を置くのは危険です。

駿東田方圏域は、3年分の整備計画箇所数を2年で超えている

指定の可否は市町単位ではなく圏域単位で判断されます。三島市・沼津市・長泉町・清水町・裾野市は、いずれも駿東田方圏域に含まれます。この圏域の構成は、沼津市・三島市・御殿場市・裾野市・伊豆市・伊豆の国市・函南町・清水町・長泉町・小山町の10市町です。

静岡県の第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画(令和6年3月策定)は、圏域ごとに基盤整備計画を持っています。駿東田方圏域の計画は次のとおりです。

計画(令和6〜8年度の3年合計)実績(令和6年4月1日以降)
放課後等デイサービス19か所・定員200人29か所
児童発達支援10か所・定員90人14か所

実績は令和8年4月1日現在の指定日から集計したもので、休止中を除いています。3年分の計画箇所数を、2年で超えています。年度別に見ると放課後等デイサービスの新規指定は令和6年度9件、令和7年度15件で、直近が最多でした。

圏域内でも、市町によって密度が倍以上違う

人口1万人あたりの事業所数を出すと、同じ圏域でも差が大きいことが分かります。事業所は令和8年4月1日現在の提供中、人口は静岡県統計センターの令和8年8月1日推計人口です(総人口あたりで、児童人口比ではありません)。

市町人口放デイ児発合計/万人
清水町30,894995.83
長泉町43,2121274.40
函南町34,400843.49
伊豆の国市43,9061233.42
三島市102,24119123.03
裾野市47,086852.76
沼津市178,12131172.69
御殿場市80,7761652.60
小山町16,940201.18
伊豆市25,412211.18
圏域計602,988119633.02
県所管計2,026,8713911822.83

清水町が県所管平均の2倍以上で突出しています。人口3万人の町に児童発達支援9か所・放課後等デイサービス9か所が入っている状態で、児童発達支援の密度2.91は圏域で最も高い数字です。長泉町も4.40で続きます。どちらも人口規模が小さい自治体に、令和6年度以降だけで放課後等デイサービス4か所ずつが加わりました。

逆に沼津市は絶対数こそ圏域最多ですが、密度では最も薄い市町です。放デイ1.74・児発0.95で、いずれも県所管平均(1.93・0.90)と同水準かそれ以下。人口18万人に対しては足りていない側になります。三島市3.03と裾野市2.76は圏域平均並みです。

数字だけで並べれば、余地が残っているのは沼津市 → 裾野市 → 三島市 → 長泉町 → 清水町の順ということになります。

法律上、申請しても指定されないことがある

放課後等デイサービスは、児童福祉法上の「特定障害児通所支援」にあたり、指定は提供量を定めて行われます(同法第21条の5の15第2項)。そのうえで同条第5項は、次のように定めています。

都道府県知事は、申請に係る種類ごとの指定通所支援の量が、都道府県障害児福祉計画で定める必要量に既に達しているか、その申請によって超えることになると認めるとき、その他計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、指定をしないことができる。

さらに第6項・第7項により、関係市町村長は指定にあたって事前の通知を求めることができ、市町村障害児福祉計画との調整の見地から意見を述べることができます。静岡県の指定申請では事業所所在市町の意見書が提出書類として求められますが、これはこの仕組みと地続きです。

ただし、箇所数の超過は「指定されない」ことを意味しない

ここは分けて考える必要があります。第5項が判断基準にしているのは、障害児福祉計画で定める指定通所支援の「必要な量」=利用者数と利用量(人日分)の見込量であって、基盤整備計画の箇所数ではありません。前掲の「3年分を2年で超過」は箇所数ベースの話です。

駿東田方圏域の見込量(1月あたり)は次のとおりで、令和8年度に向けて増加を見込む設定になっています。

令和5年度見込令和6年度令和7年度令和8年度
児童発達支援608人670人735人805人
放課後等デイサービス1,637人1,759人1,870人1,974人

そして令和6・7年度の実績値を、県は公表していません。中間評価や進捗資料は2026年9月6日時点で確認できませんでした。したがって、見込量に対して何%まで埋まっているかは外部からは算定できません。

加えて、計画本文には「児童発達支援や放課後等デイサービスについては、今後も利用者の大幅な増加が見込まれており、支援を提供する事業所の更なる増加が予想されます」と書かれています。抑制方向の記述ではありません。静岡県が第5項を実際に適用しているかどうかも、公表資料からは読み取れませんでした。

結局、事前協議で確認するしかない

密度の数字は、所在市町の福祉部署がどう答えるかを予測する材料にはなります。しかし答えそのものではありません。指定の可否は圏域の見込量と市町の意見で決まり、その市町の意見書は申請書類として実際に要求されます。

静岡県が示している手続きの流れでは、指定申請(指定月の前々月末まで)の前に「事前協議・相談(指定月の数か月前)」が置かれています。この工程が形式ではなく実質的な意味を持つのは、まさにここが理由です。

物件を決める前に、所在市町の福祉部署と県福祉指導課に直接確認してください。密度が高い市町で検討している場合、この確認を後回しにすると、賃料だけが先に発生することになります。

確認が済んで開設に進む段階の手続き——指定権者と窓口、申請スケジュール、人員基準、児童発達支援管理責任者の確保、実際につまずく書類——については、静岡県で放課後等デイサービス・児童発達支援の指定を受けるで整理しています。

ご相談について

当事務所は静岡県東部(三島市・沼津市・長泉町ほか)を拠点に、障害福祉サービス・障害児通所支援の指定申請を扱っています。代表は理学療法士・介護支援専門員・行政書士の3つの資格を持ち、リハビリテーションの現場に関わってきました。

開設地の検討段階からのご相談にも対応しています。詳しくは許認可・指定申請サポートをご覧ください。

なお本記事の集計は、静岡県が公開している資料を当事務所で突き合わせたものです。指定の可否を判断・保証するものではありません。

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