介護事業所で外国人スタッフを受け入れるとき、人数と時期だけを見て採用を決めると、5年後に人が残りません。介護分野には特定技能2号が設けられていないためです。特定技能1号で受け入れた人が通算5年を超えて介護の現場で働き続けるには、介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」に変更するのが基本の道になります。
つまり「5年働いて帰国する」前提の人だけで枠を埋めると、5年ごとに現場が入れ替わり、経験が事業所に蓄積しません。本記事では、静岡県東部の実際の数字を確認したうえで、受け入れる人材の構成をどう考えるかを整理します。
本記事は2026年9月6日時点の情報に基づいています。
静岡県東部の外国人労働者は約1万2千人。医療・福祉の伸びが最も大きい
静岡労働局が公表している「外国人雇用状況」の届出状況(令和7年10月末現在)には、ハローワークの管内別の内訳が載っています。三島・沼津の両管内を合わせると、次のとおりです。
| 管内 | 外国人を雇用する事業所 | 外国人労働者 | うち特定技能 | うち技能実習 |
|---|---|---|---|---|
| 三島 | 776所 | 3,653人 | 489人 | 851人 |
| 沼津 | 1,295所 | 8,335人 | 1,193人 | 1,498人 |
| 合計 | 2,071所 | 11,988人 | 1,682人 | 2,349人 |
県全体では外国人労働者88,968人(前年比9.1%増)、外国人を雇用する事業所は10,967所(同7.2%増)で、いずれも届出が義務化された平成19年以降で最多です。静岡県の外国人労働者数は全国7位にあたります。
介護事業所にとって重要なのは、産業別の伸び率です。
- 外国人労働者数の対前年増加率が最も高い産業は「医療、福祉」の29.4%増(次いで宿泊業・飲食サービス業の18.8%増)
- 労働者数そのものが最も多いのは製造業(全体の36.7%)だが、伸びているのは医療・福祉
- 外国人を雇用する事業所の64.7%が「30人未満」の規模
県内で外国人の採用が最も伸びている産業が医療・福祉であり、その担い手の3分の2が30人未満の事業所です。人事・労務の専任者を置きにくい規模が中心になっています。
県の医療・福祉で働く外国人の4人に1人はミャンマー出身
国籍別の人数では、ブラジル18,686人、ベトナム17,224人、フィリピン15,462人が上位です。一方、対前年の伸び率で見ると順位が入れ替わります。
- ミャンマー 4,963人(前年比32.9%増)
- インドネシア 7,950人(前年比29.2%増)
- ネパール 5,957人(前年比28.5%増)
同じ資料には国籍別・産業別のクロス集計(別表7)も載っています。医療・福祉に絞ると、県全体の姿は次のとおりです。
| 国籍 | 医療・福祉で働く人数 | その国籍の労働者に占める割合 | 医療・福祉の外国人に占める割合 |
|---|---|---|---|
| ミャンマー | 950人 | 19.1% | 26.1% |
| フィリピン | 701人 | 4.5% | 19.3% |
| インドネシア | 586人 | 7.4% | 16.1% |
| ベトナム | 386人 | 2.2% | 10.6% |
| ブラジル | 276人 | 1.5% | 7.6% |
| 全国籍計 | 3,634人 | ― | 100% |
静岡県の医療・福祉で働く外国人労働者は3,634人で、そのうち950人(26.1%)がミャンマー出身です。国籍別で最も多いという結果です。またミャンマー出身の労働者4,963人のうち19.1%が医療・福祉で働いており、この比率も国籍別で最も高くなっています。
労働者数そのものではブラジル・ベトナムが上位ですが、医療・福祉に限ると構成が変わります。県内で介護分野の採用を考えるとき、候補となる人材の国籍構成は、県全体の外国人労働者の構成とは異なります。
介護分野には特定技能2号がない
人材構成を考えるうえで前提になる制度の形を確認します。出入国在留管理庁の在留資格「特定技能」のページでは、次のとおり定められています。
| 在留資格 | 在留期間 | 通算の上限 | 介護分野 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 法務大臣が個々に指定する期間(3年を超えない範囲) | 通算で原則5年以内 | 対象 |
| 特定技能2号 | 3年、2年、1年又は6月 | 通算上限の定めの記載なし | 対象分野に含まれていない |
| 介護 | 5年、3年、1年又は3月 | 通算上限の定めの記載なし | ―(介護福祉士の資格が必要) |
特定技能2号は、建設やビルクリーニングなど複数の分野で設けられていますが、介護分野は対象に含まれていません。介護には在留資格「介護」が別に用意されているためです。この在留資格は、介護福祉士の資格を有する者が対象で、資格の取得経路は問われません(令和2年4月1日の改正による)。
ここで補足が要ります。永住者・日本人の配偶者等・定住者といった身分に基づく在留資格を持つ人は、就労に制限がないため介護の現場でも期限なく働けます。静岡県では在留資格別で最も多く、39,296人(全体の44.2%)を占めており、すでに介護現場を支えている層です。
ただし、これは受入れ側が設計できるものではありません。本人がその在留資格を持っているかどうかの話だからです。事業所がこれから受け入れる人材について「5年後にどうするか」を組み立てるとき、選択肢として設計できるのは、介護福祉士を取得して在留資格「介護」に変更するルートになります。ここを織り込むかどうかで、5年後の人員体制が変わります。
在留の目的が違えば、必要な支援も変わる
ここからは統計ではなく、私が理学療法士・介護支援専門員として現場に関わってきた中で見てきたことです。
外国人スタッフの中には、一定期間働いて帰国することを予定している方もいれば、日本で働き続けることを考えている方もいます。どちらが良いという話ではありません。ただ、本人が描いている先行きが違えば、事業所が用意すべき支援も変わります。
たとえば日本語の学習です。日本で資格を取ることを目標にしている方には、業務に必要な水準を超えて学ぶ理由があります。一方、数年で帰国する予定の方の場合、学習を続ける動機づけを本人任せにすると続きにくい場面があります。これは本人の能力や出身国の問題ではなく、目標の置き方と、事業所側の支援設計の問題です。
なお、これは私が現場で見てきた範囲の話であり、統計的に検証されたものではありません。
介護福祉士を目指す層を、一定数、核に置く
ここが本記事の結論です。5年後に介護福祉士の取得を目指す人を、一定数、意図的に採用の中に入れておく必要があります。
理由は2つあります。
- 事業所に経験が残る。介護分野には特定技能2号がない以上、資格取得を目指す人がいなければ5年ごとに人が入れ替わります。指導できる中堅が育ちません
- 周囲が引き上げられる。資格取得という具体的な目標を持って働いている人がいる職場では、それに引っ張られる形で意欲の高い人が育ちます。逆に全員が「5年で帰る」前提だと、この牽引役が生まれません
採用の段階で本人の希望を確認し、資格取得を目指す人には学習時間の確保や受験費用の支援といった条件を用意しておく。逆に帰国を予定している方には、その前提で担っていただく業務を設計する。人数を揃えることと、5年後の構成を設計することは別の作業です。
2027年4月の育成就労移行で、この設計はより重要になる
技能実習制度は育成就労制度へ移行します。育成就労法の施行・運用開始は、一部の規定を除き2027年(令和9年)4月1日です。
前掲のとおり、三島・沼津の両管内には技能実習の在留資格で働く方が2,349人います。この方々の受入れの枠組みが、今後変わっていきます。
施行日前の申請受付は既に始まっています。
| 手続き | 受付開始 | 受付先 |
|---|---|---|
| 監理支援機関の許可申請 | 2026年(令和8年)4月15日 | 外国人技能実習機構 |
| 育成就労計画の認定申請 | 2026年(令和8年)9月1日 | 外国人技能実習機構 |
なお出入国在留管理庁のページは、監理支援機関の許可申請について「受け付けています」と記載する一方、育成就労計画の認定申請については「受け付けることを予定しています」という表記のままです(2026年9月6日確認)。延期を告知する記載は出ていません。
育成就労は、人材を育成し、その上で人材を確保することを目的に据えた制度です。制度の名称や手続きが変わっても、5年後・10年後に誰が現場に残るのかという設計の必要性は変わりません。むしろ、育成が制度の目的に据えられた分、受入れ側がキャリアの道筋を示せるかどうかが問われます。
受入れ機関・登録支援機関・行政書士が同じ絵を見る必要がある
この設計は、事業所だけで完結しません。
- 受入れ機関(事業所)は、配属後の育成計画と資格取得の支援体制を持つ
- 登録支援機関・監理支援機関は、本人の希望と事業所の設計が合っているかを入口で確認する
- 行政書士は、在留資格の変更を含めた手続きの道筋を、5年先まで見て組み立てる
介護の人材不足は、目の前の欠員を埋めれば解決する問題ではありません。関わる三者が「5年後に誰が残るか」を同じ前提で見ていないと、5年ごとに同じ採用を繰り返すことになります。手続きの代行だけを切り出しても、この問題は解けません。
ご相談について
当事務所は静岡県東部(三島市・沼津市・長泉町ほか)を拠点に、外国人雇用に関する手続きを扱っています。代表は理学療法士・介護支援専門員・行政書士の3つの資格を持ち、介護の現場に関わってきました。人数を揃える話としてではなく、5年後の人員体制の設計としてご相談いただけます。
受け入れをこれから検討する事業所の方は外国人雇用サポートを、監理団体・登録支援機関の方は監理団体・登録支援機関の皆さまへをご覧ください。
外国人スタッフの定着については外国人介護スタッフが体を壊す理由、定着を阻む二つの壁、育成就労への移行で変わる点については技能実習はどう変わる? 育成就労で企業が押さえるべき変更点で、それぞれ詳しく書いています。
出典
- 静岡労働局「静岡県の『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)」令和8年1月30日発表https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/jirei_toukei/shokugyou_shoukai/toukei/gaikokujinkoyou_toukei.html
- 出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html
- 出入国在留管理庁「在留資格『介護』」https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/nursingcare.html
- 出入国在留管理庁「施行日前申請について」https://www.moj.go.jp/isa/03_00174.html

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